2011年8月17日水曜日

ダウン症のお子様をお持ちの方へ

築地での展覧会の時、今回はダウン症の子がいる保護者の方が多く来場されたのが、
印象的だった。それもまだ生まれたばかりという方。
お父様が1人でというケースやお孫さんがダウン症と診断されたという方。
分からないことだらけで、何をどう考えていいのかと、とまどい、
何かないかと訪れて下さった方達だった。
たくさんの方とお話ししたが、保護者の方達が不安を抱えやすい環境がある。
情報がないというお話もよく聞く。

最近、アトリエの保護者の方達からも生まれた時の状況を聞かせていただく事がある。
特にお母さん達の孤独感は私たちの想像以上のもののようだ。
考えさせられるのは、最初の場面でのお医者さん達の責任の大きさだ。
そこで少しでもお母様を安心させてあげられるか、
希望を感じさせられるかで、その後の人生も大きく変わる。
保護者の方達のお話を伺うと、その時の記憶は強くいつまでも残るものだ。
心ない言葉はどれほどの影響をその後に与えるか。
反対にあたたかい希望の言葉が、その後どれだけ励みになるか。
真剣に考えなければならない。

僕が尊敬しているお医者さんは聖路加国際病院の細谷亮太先生だ。
本当にやさしく、あたたかく、真剣な先生だ。
1人の人間の果たす役割は大きい。

別の話だけど
以前、あるきっかけからお医者さん達の集まりに呼んでいただいた事がある。
そこではダウン症の人たちについて、本気で学ぼうとする謙虚なお医者さんや
看護士の方達が集まっていた。
僕達の話も真剣に聞いて下さり、看護士の方や、直接ダウン症の人や保護者の方達と接する現場に身を置く方達からは、立ち上がって大きな拍手まで頂いた。
真摯に学び、少しでも本人や保護者の方達の役にたちたいと、
努力している人達がたくさんいる事にも気付かされた。

こうした直接、本人や保護者の方達と接する方々が、
学び合い、自覚を高め合い、情報を共有していくことで、
もっともっと、環境を改善していくことが可能だろう。
1人の人間が(それは保護者であれ、関わるひとであれ)背負い込んでしまうことなく、
助け合い、支え合えるネットワークが必要だ。
ここでは理解されるけど、外に行けばまた違う目で見られるという状況は、
変えていかなければならない。

彼らには可能性や希望がある。
彼らに出会い、たくさんのことを教えられ、慰められた人達、
希望を見出した人達がいっぱいいる。
健常者(と言われている人達)とは違うリズムでも、
成長もして行くし、色んなことを理解し、友達ももっていく。
人を明るく穏やかにしてくれる。
また、彼らの描く作品は様々な専門家を圧倒している。
彼らは1000人に1人(近代では700人に1人)という割合で、
必ず、誰の責任でもなく産まれて来る。
必要があるから産まれて来る。
1000人に1人、あるいは700人に1人、
彼らのような存在が必要なのだ。
支え合える環境さえ発明出来れば、彼らにはなんの問題も、難しさもない。
むしろ私たちを助けてくれる存在だ。
場に調和を、世界に平和をもたらす存在だ。
彼らのリズムを知り、お互いに協力して良い環境を創ること。
大げさにいえば、それが我々人類の進むべき道なのだ。


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書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。