2011年8月6日土曜日

夏休み 夜のアトリエ

すっかり夏らしく、暑い毎日。
アトリエ・エレマン・プレザンは、三重アトリエでは8月25日から韮崎大村美術館で開催される「無垢の芸術家達 アトリエ・エレマン・プレザンの世界」展に向けて準備をおこなっている。
東京アトリエは節電と作家たちの夏の体力を考えて、夜のアトリエを開いている。
ここ数日、毎日夜の制作を見ていると、昼とはまた違った面白さがある。
昼間のまだこれから色んな事をする前に描いている意識と、夜の一日終わった後の制作に向かう時間の意識。
昨日は久しぶりにゆうちゃんが来て、始めは眠そうだったけど絵に入っていくと、冴えてるなあと感じさせられた。朝早くも多分、いい絵を描きそうな気がする。
通うのは大変だからいつか合宿でもした時に早朝の制作があってもいい。
もちろん、起きる時間はみんな違うから朝早くが人によって何時なのか分からないけど。
7月20日から30日まで、うおがし銘茶 茶の実倶楽部でおこなわれた展覧会も本当に好評でいい企画になった。
葉さんをはじめ、うおがし銘茶の方々にはただ感謝。
担当して下さった葉さんの作家とアトリエへの思いによって出来た展覧会だった。
ダウン症の人達の心であり、こう言って良ければ魂でもある作品を大切に扱い、伝えていくと深いところで響いて下さる方達と出会う事がある。
こうした出会いこそが大切なのだと思う。今回も様々な方達と出会った。
印象的だったのが、銀座の有名な和食店の料理長さんが食い入る様に絵を鑑賞されていたこと。すこしお話ししたけど絵も料理も同じとお互い通じるものを感じた。
ダウン症の人たちの描く世界は、何かを真剣に追求されておられる方には必ず通じると確認した場面だった。
絵画も拝むようなものではなくてもっと生きていることと直結するような何かなのだと思う。食べて美味しいと思う、飲んで美味しいと思う、聞いて心地よいと感じる、いいにおい、見て美しいと感じる、そこには生命のバランス感覚があるはずだ。
基本的に快を感じるものは心にも身体にもよく、不快に感じるものは悪いものなはず。
本能の感覚が壊れていなければ。
ダウン症の人たちは本能的に色彩と造形によって快を感じるバランスを知っている。
だから描くことによって自分も他人も気持ち良くなれる。
この無作為の自然さが彼らの持ち味だと思う。頭で作品を鑑賞する人は彼らの作品を、現代作家や抽象画の誰それに似ているだとか、これは現代アートだとかさも褒め言葉のように言って下さるが、彼らの作品とプロの職業画家の作品は似て非なるものだ。
これはどちらがいいと言っているのではない。ただ違う種類のものだということだ。
プロの画家とダウン症の人たちの作品の一番の違いは、良くも悪くも意図され計算されて創られたものと無作為に生み出されたものの差だろう。
もちろん、彼らの作品にも彼ら独自の計算や意図が働く場合があるが、これはまた少し種類の違うものだ。
アトリエではダウン症の人たちの作品を福祉のような助ける、助けられるという構図ではなく(日本のアウトサイダーアート、障害者アートは完全に福祉だと思う)、美術的視点で提示して来た。見る人が見れば分かるように。
その結果としてたくさんの評価を頂いてきた。
次の段階は美術という専門の領域だけでなく、一般の方たちに見て楽しんで頂く時期だと思う。ここ数年はそういう機会に恵まれて、普段絵を鑑賞するような習慣の無い方々が彼らの作品にふれ、それぞれの感動を口にして下さった。
アール•イマキュレはどんな人にも伝わると思う。(アトリエではダウン症の人たちの作品をアール•イマキュレと呼び美術史に位置づけていこうとしてきた。一部誤解のある発言も公表されて来たがこの言葉はアトリエ・エレマン・プレザン開設の佐藤肇、敬子によって提案され、数人の識者達と相談の上、命名されている)

こうして展覧会を開くと様々な方々にご来場いただき、はじめて作品に接する人たちからも感動の声を沢山聞くけど、最近はどうも保護者の方達に見て頂けていないのが残念でならない。あんまり言ってしまうと見に行かなければならないと思われても困るので少しだけ。
自分の子供の作品が展示されたときだけ見るのじゃなく、彼らはみんな仲間なのだから他の人達の作品も見て気持ちを一つにして欲しい。
みんなの作品をみんなで見て、みんなで喜べたらどんなに良いだろうか。
アトリエ・エレマン・プレザンに所属している作家はみんな共通してすぐれた感性を示していると思う。誰が誰より上ということは本当はいえない。
みんなの作品を一緒に見ることで実は個人のことも良く分かったりする。
1人の人ばかり見ていると見えなくなる部分もある。
外の人達があんなに素晴らしいと言って下さっているのだから、アトリエ内でももう一度仲間たちを知っていこう。
この人の作品は素晴らしいと言われたとして、もし隣にある作品が違っていたらその作品もそこまで引き立っただろうか。
彼らの世界は作品も人も互いを活かし合う。
ましてや彼らの場合、制作の場を共にしているみんなの意識が個人の作品の中に現れているのだから。良い作品が生まれる為には良い環境が必要。良い環境はスタッフだけでなく、一緒に描いている他の3人4人で創られているのだから。

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書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。