2015年4月22日水曜日

遅れて来た春

やっと暖かくなった。
春の匂いを身に受けているうち、今度はすぐに夏になるのだろう。

すべては夢の中だと感じるし、そしてそれなら良い夢を見ようと思う。

本当に鮮やかな光。やさしい暖かさ。
心地良い空気。世界全体が軽くなったみたい。

共働学舎の悦子さんがお手紙を下さった。
本当に嬉しい。会いたいなあ。
僕にとっては育ててもらったようなものだけど、
学舎の中ではほんの一時立ち寄ったにすぎない僕のことを、
覚えていてもらえることは、本当に本当にありがたい。

亡くなった、のぶちゃんとたくみさんの追悼集を頂いた。
これを見ながら、昨日の夜涙が溢れてきた。
悦子さんは忘れないで欲しいから、と書いて下さっていた。
僕がみんなのことを忘れることは一生無いだろう。

たくみさんの子供の頃の写真。
なんて、やさしい、素直な、かわいいい表情だろう。
その後に経験しなければならなくなる様々なことを思うと、
切なくて、悲しくて、どうしようもない気持ちになる。

2人とも、あの笑顔で見守っていてくれている。

あんなに色んなことがあったのに、何も変わっていない気もする。

空は青く、眩しい太陽が僕達を包んでいる。

ゆうたに会いたい。
今回は東京が長い。

みんなには少しでも良い場で良い時間を過ごしてもらいたい。
それがどれほど自分の宝になるかも知っている。

素晴らしいお仕事をされている方が身近に居ることが嬉しい。
勉強になる。
あんな仕事をしたいと思う。

海辺の国民休暇村で住み込みでアルバイトしていたことがある。
心臓に病気があっていつどうなるか分からない、という青年が居た。
僕よりは年上。
仲良くなった。色んなことを話した。
身体に爆弾を抱えているようなものと、自分の状況を説明した。
ずっと後の話だが、亡くなったそうだ。

休憩時間に彼が僕に「いつもジュース買わないね」と言った。
はっとした。
みんなが販売機で何気なくジュースを買うところを、
僕は別世界の景色のように無意識に見ていた。
あっそうか、買えるなあ、と気がついた。
それ以来、販売機で飲み物を普通に買えるようになった。

買えるということが僕にはそれまで無かったから。

ずっと食べていない時もあった。
いつもお腹を空かせていた。

母は水商売だったから、夜はいない。昼間は寝ている。
たまにパチンコ屋に行く時は僕がついて行く。
玉拾い。落ちているパチンコ玉を拾って集める。
時々、助けてくれる人が居て、玉をくれたりもする。
缶コーヒーの残りが捨ててあった。
喉が渇いていた僕はそれを飲んだ。
途端に咳き込んで息が苦しくなった。
そして病院。
僅かに珈琲を残した缶は灰皿に使われていて、吸い殻と灰が入っていた。

まだ幼かった。
その後の僕はそんな隙は見せないようになった。
良いのか悪いのかは分からないけれど。

見上げると青い空。眩しい太陽。
どこかを散歩してみたくなる。
ふわーっとして、ぱーっと明るくて、本当に良い天気。
良い仕事しましょう。

今週位から、また制作の流れも変わって来そう。
良く感じとって、その時に出来る最善を見つけて行きたい。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。