台風が接近している。
関東に大きく近付くのは夕方以降らしいから、
アトリエの時間は大丈夫だろう。帰宅時間の交通機関の状況は少し気になる。
少し見学の方の多い時期でもあるので、書いてみたい。
以前にも書いていることだが、特にマスコミ関連の方にはお気をつけいただきたい。
制作の場はとても繊細なものだ。
配慮と敬意を持ってご覧いただきたい。
その都度来られる方にはお話しして入る。
絵画クラスに関しては座ったままでのご見学をお願いしている。
ここがどんな場なのか、彼らがどんな存在なのか、
決めつけないで、まっさらな気持ちで見ていただきたい。
難しいがなるべく先入観をとって素直な気持ちで。
そうすれば、必ず何かが見えるはず。
良く、みんなにたくさん話しかける人もいるが、
言葉によるコミニケーションがすべてではない。
「すごいね」「きれいだね」とか、口先だけで言っても彼らには分かる。
まして、「ちゃんと考えてるんだあ」とか「細かく出来るんだね」なんて、
逆に失礼だと思わなければならない。
こんな言い方をするのも、作家たちの為の場所を汚して欲しくない、
という当然の思いもあるのだが、それだけではない。
せっかく、何かを感じたからこそ、見に来たのだから、
良いものを見ていただきたい、出会ったことのないものと、
出会っていただきたいという思いがある。
僕も含め、よし子やゆりあ達スタッフは、何気なく、
たわいもない会話をしたり、時には遊んでいるように見えるかもしれない。
でも、実はすべてが場を良くするために出ている行為であって、
ただの会話やただの笑いやただの遊びは、制作の場では一切ない。
だから、せめてしばらくの時間でも場全体を感じていただきたい。
少なくとも最初はひいて見る、ことが条件となる。
ひきで見たことがなければ、作家たちの創る作品も場も、
一人一人のことも理解出来ない。
彼らと普通の友達になることなら出来るだろうけど。
もちろん、そんなリラックスした場も創っていけたらとは思っている。
平日プレクラスはそれに近いだろう。
ただ、アトリエ・エレマン・プレザンは彼らの持つ本質に迫ろうとしている、
という大切な事は忘れないでいただきたい。
単に集まって楽しく絵を描けば、素晴らしい環境になるというものではない。
この場に入る資格がある人間は、
スタッフも含め、場に敬意を持って、素直に学ぼうとし、
自分の持つ先入観や固定されたイメージを、
瞬間瞬間に取り除いていこうという努力を厭わない人だ。
1人の人間の持つ意識や構えによって、その場は変わる、
人に強い影響を与える、ということは何度も書いて来たと思う。
そこで、知っていて損はない話をしてみよう。
これは人生のすべてにいえること。
仕事や家庭や生活の中全部がそうなのだけど、
違うレベルのエネルギーが2つ以上集まれば、確実に混ざる。
混ざるとどうなるか、混ざると真ん中の状態になる。
たくさんの人が集まると、その場はそれぞれのちょうど中間の状態に落着く。
このことは、何を意味するのか。
一番大切なことは、全員が高い意識を持つと言うことだが、
それは目指していくことではあるが、なかなかそうはいかない。
つまり、理想論だ。僕の話は理想が多いが、ここでは有効な現実に即したことを書く。
特にこれから、学び、伸びていこうという人に知って貰いたい。
道徳では人間は平等と言っているが、決して平等ではない。
違うもの、違うレベルが集まっているのが人間の世界だ。
一言でいうと、こういう事だ。
高いレベルの能力や意識を持っている人は損をする。
損をしていいということを言いたいのだけど、
損をするという事実は知っておいた方が良い。
例えば上手、下手という技術レベルの話でいうと、
何かを上手くなりたければ、まずは下手な人と一緒にやらないことだ。
自分より上手い人と一緒にやれば必ず上手くなる。
いつかは人の為に損をして全く構わないという人間になるべきだが、
伸びていく時期は、まず、自分より下のレベルの人間と付き合わないことだ。
日本の社会でそうすることはほとんど不可能だろうが。
自分より、上の人とばかり付き合っていけば、自分も引き上げられていく。
実は経験的には、運、不運も同じように見える。
申し訳ないが不運になりたくなければ、そういう人達で集まらないこと。
これはあくまで、
いつか強くなって、どんな人の為にでもなれるようになるための話。
こころのことでも同じで、あまりに清く良いこころを持つ人は、
人にあげるものが多いだけで損をして行く。
ビジョンのある人の周りに人は集まるが、
集まる人達はビジョンを貰う一方になる。
みんなが集まると、低いレベルにいる人達は少しだけ引き上げられ、
高いレベルにいる人達は少しだけ引き下げられる。
でも、これはいいことでも悪いことでもなく、ただの事実だ。
そこを自覚していけば、自分は今、どんな環境にいなければならないのか、
理解出来るようになってくる。
人の為に何かがしたければ、その人の持つエネルギーに左右されないだけの、
力を身につける必要がある。
そうしなければ、共倒れ。どちらにとっても良い結果にはならない。
でも、最後には理想の状態に辿り着くべきだ。
高い意識を持ち続け、損し続けられる人間に。
エネルギーが真ん中に来ることは、良いことでも悪いことでもなく、
ただの事実だと書いた。
ならば、損ではなく、ただの事実として真ん中のレベルに貢献出来る人間になろう。