2012年5月5日土曜日

関わる責任

三重のアトリエに行ってきました。
緑に囲まれて、これからのヴィジョンが見えました。
そのことは次回から順をおって書いていきます。

コレクトポイント原宿店での展示は無事終了致しました。
来て下さった皆様、ありがとうございます。
今回の企画では色々と考えさせられることがありました。
展示についてもあります。
来ていただいた方々にお詫びと訂正だけさせていただきます。
展示期間中、後半からは私達がおこなった展示構成とは違う形になっていました。

昨日、コレクトポイント原宿店に搬出にうかがいました。
正面の作品を見て、アレっと思いました。
作品の順番が変わっている。更に絵の位置も高さもズレていてガタガタ。
うーん。これはどうしたことか。

お話をお聞きすると、イベントがあって途中一度、作品をはずしたそうです。

まあ、誰が悪い訳ではない。

でも、あったものはあった場所に戻すべきでしょう。

このような機会を頂いて、様々な場面で助けていただいたのだから、
先方には感謝の気持ちでいっぱいだ。

それでも、責任上伝えなければならない。
今回の展示はアトリエが構成した形と違うものになっていた時期があった、
という部分を皆さんに知っていただき、ご理解いただければと思います。
来ていただいた方にはベストな状態をお見せ出来ずに申し訳ございませんでした。

あまり言いたくはないし、そんなことはわざわざ言うことではないが、
展示構成は大変な作業だ。
本来はそれを専門にするプロがおこなうベきことだ。
アトリエの場合、美術館でだけ展示している訳ではないので、
キュレーター、学芸員のいないところで展示を行うことの方が多い。
そういった方が居る場所でなら、その方が信頼出来れば全てお任せする。

大切なのは外に出て行く。
他のジャンルと交わって、より普遍的なものを目指すことだと思っている。
だから、作品を扱う専門の方が居ない場所でも良い形を創る。
そういう機会を作って来たから、このようなリスクも承知の上だ。

良い機会だから考えてみよう。
作品を展示するということは、作品と関わるということだ。
制作の場に入るということも、作家たちの内面と関わるということだ。
関わること、そこには責任が伴う。
このブログでもこれまで、作家たちのことだけでなく、
関わる人間のこともテーマの中心にしてきた。
それは、もちろん僕自身が関わる立場にいるからだ。

例えば、アトリエでは絵の指導はおこなわない。
本人から出てくる作品にのみ力を感じるからだ。
誰かの目が入っているな、描かされているな、という作品は見ればすぐに分かる。
これは何度か書いたが、
だからといって私達が彼らに全く影響を与えないかと言うと、
やっぱりそんなことはない。
道具も環境もアトリエで用意しているし、
人がそこにいるということは、何らかの形で響き合うということだ。
つまりは私達は関わることなくしては何も出来ない。

だから、大切なのはどう関わるかだ。
関わることに責任を持つことだ。
僕自身は自分が関わった以上、その人がいつもよりその人らしく、
その人の本質が出てくる様にと思っている。
そして、少しだけそれが出来る様になったと感じている。

関わることは楽しいことだし、深いことだ。
そして、怖いことでもある。

制作の場でも、展示でも、私達が目指しているのは同じことだ。
作家たちの一番本質にある、最もその人らしい優れた性質を引き出すこと。
引き出すと言うと、ちょっと強引な感じだが他に言葉が見つからない。
実際には出産のようなものだと感じる。
スタッフとはお産婆さんの様なものではないか。
あくまで産むのは本人だし、自然の力しかない。
引き出してもいない。産まれるということだ。
でも、こちらも命がけというところも似ている。

展示にしても場所によって活きる作品は変わるし、
一枚の絵を変えたら、他の絵も全部変わってしまう。
順番も一ヶ所入れ替えてしまったら、すでに文脈は変わり、
意味を失うこともある。

これは専門的な話ではない。
世の中を見渡していると、本当に関わることも、責任も、
自覚が失われて来ているなあと思う。
適当に仕事をしている人も多い。
本人達は自分で自分をダメにしていっていることに気がつかない。

本気で生きようよ。まじめにやろうよと思う。

さて、前回、新しい繋がり、「家」や「家族」がキーになると書いた。
このテーマをこれから考えていきたい。
本当の意味のこころの通い合った「家」を創りたい。
エコールやプレで実践して来たことを、もっと発展させていきたい。
まずは最小単位の場を考えたい。
次回は、この「家」にふさわしい「環境」を考えていきたい。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。