2012年5月11日金曜日

自然に人が集まる場所

さてさて、前回の続きを書こう。
東京のアトリエは発信場所であり、社会の様々な要求に応えていく場でもある。
つまりは、絶えず攻めの活動でもある。
本拠地は本当に安心出来る静かな場であった方がいい。
このバランスが大切だと思う。

今、創っていこうとしているのは、安定した生活部分の環境だ。
これまで以上にみんなの協力が必要になる場面があるだろう。
その時はどうか、ご協力お願いします。

大切なのは作家たちの感性が守られて行くこと。
そして、その場が他の人達にとっても、良い場であること。

生活部分は、グループホームの制度の中で整えると書いた。
でも、既成のグループホームを作る訳ではない。
あくまで、これまでの活動に相応しい、明るくあたたかい環境をつくるために、
様々な制度を使う、ということだ。
既存の施設にあるような、閉鎖的で、一般の人達が近付きにくい場はつくらない。

暗い、汚い、何かダサイ(あえてこんな言葉を使わせていただくが)という、
今までの施設を、これから増やしていっても何の意味もない。

グループホームの部分、作業所の部分、それから支援団体は法人化する。
株式会社も作って行く。
という風に一つ一つ、部門ごとにそれにあった体制を考えたい。
それらが集まってダウンズタウンの土台になっていけばいい。

まずは三重の自然環境の中で、最初の生活部門を考えている。
最初に始まる部分の体制が、グループホームなのか、作業所なのか、
それともケアホームなのか。
いずれにしても、最善の策をとって、一番重要な中味の部分を整えて行きたい。
最初の形がモデルになるのだから、中味は本当に良いものにしたい。

これからは東京と三重でしばらく、
よし子と僕は分担して進めて行くことになるだろう。

みんなで協力し合えば、良い環境を創ることが出来る。
このことは僕自身、関わって来た一人一人に教わったことだ。
作家たちも、学生達も、アトリエに関心を示してくれた多くの方達も、
日々、その事を教えてくれた。

この活動は自然にみんなが協力してくれようとする。
これまで、たくさんの人達が力を貸してくれた。

みんなこころのどこかで、同じことを願っている。
同じことを求めている。

平和な場が欲しいと、みんな感じている。
その想いが一つになれば、現実は動くはず。

今度の講演でテーマに選んだ「彼らが教えてくれたこと」とは、
人間、一人一人の調和へ向かうこころが、他の人のこころを動かし、
繋がりを生み、環境を変えて行くことが出来ると言うことだ。

この数年間は特に、本当にたくさんの人達がこのアトリエに集まって来た。
みんながここに何かしらの夢を描き、協力したいと願った。

今の世界に本当の場所がないから、
混乱と暴力と無知と孤立が、どこまでも広がっているから、
私達はこの社会から居場所を失った。
でも、そこに気が付いた人達がやり直そうとしている。
人間を信じ、自分達ですすんで良いものを生み出そうとしている。
世界に調和と平和を、みんなで創ろうとしている。
アトリエのささやかな活動に共感して下さり、
集まって下さる人達が、そのことを証明している。

これが希望の原理だ。

なぜ、ダウン症の人たちの作品に人は感動するのか。
なぜ、その環境に人は集まるのか。
これまで、おこなって来た様々な活動を通じて、
調和の力を人は無視することが出来ないのだと確信した。
そして、共感する人達、一人一人がこの活動を創っているということが。
私達は受け身ではない。誰かの提案を鵜呑みにしている訳ではない。
素晴らしい作品が外にある訳でもない。
みんながこころの内側に同じ美と調和と希望を持っている。
みんなが自ら見出し、動きだし、響き合っている。

東京のアトリエにも、いつの間にか自然にたくさんの人が集まって来た。
みんなが家族のように過ごして来た。
こういった場を広げて行きたい。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。