さてさて、前回の続きを書こう。
東京のアトリエは発信場所であり、社会の様々な要求に応えていく場でもある。
つまりは、絶えず攻めの活動でもある。
本拠地は本当に安心出来る静かな場であった方がいい。
このバランスが大切だと思う。
今、創っていこうとしているのは、安定した生活部分の環境だ。
これまで以上にみんなの協力が必要になる場面があるだろう。
その時はどうか、ご協力お願いします。
大切なのは作家たちの感性が守られて行くこと。
そして、その場が他の人達にとっても、良い場であること。
生活部分は、グループホームの制度の中で整えると書いた。
でも、既成のグループホームを作る訳ではない。
あくまで、これまでの活動に相応しい、明るくあたたかい環境をつくるために、
様々な制度を使う、ということだ。
既存の施設にあるような、閉鎖的で、一般の人達が近付きにくい場はつくらない。
暗い、汚い、何かダサイ(あえてこんな言葉を使わせていただくが)という、
今までの施設を、これから増やしていっても何の意味もない。
グループホームの部分、作業所の部分、それから支援団体は法人化する。
株式会社も作って行く。
という風に一つ一つ、部門ごとにそれにあった体制を考えたい。
それらが集まってダウンズタウンの土台になっていけばいい。
まずは三重の自然環境の中で、最初の生活部門を考えている。
最初に始まる部分の体制が、グループホームなのか、作業所なのか、
それともケアホームなのか。
いずれにしても、最善の策をとって、一番重要な中味の部分を整えて行きたい。
最初の形がモデルになるのだから、中味は本当に良いものにしたい。
これからは東京と三重でしばらく、
よし子と僕は分担して進めて行くことになるだろう。
みんなで協力し合えば、良い環境を創ることが出来る。
このことは僕自身、関わって来た一人一人に教わったことだ。
作家たちも、学生達も、アトリエに関心を示してくれた多くの方達も、
日々、その事を教えてくれた。
この活動は自然にみんなが協力してくれようとする。
これまで、たくさんの人達が力を貸してくれた。
みんなこころのどこかで、同じことを願っている。
同じことを求めている。
平和な場が欲しいと、みんな感じている。
その想いが一つになれば、現実は動くはず。
今度の講演でテーマに選んだ「彼らが教えてくれたこと」とは、
人間、一人一人の調和へ向かうこころが、他の人のこころを動かし、
繋がりを生み、環境を変えて行くことが出来ると言うことだ。
この数年間は特に、本当にたくさんの人達がこのアトリエに集まって来た。
みんながここに何かしらの夢を描き、協力したいと願った。
今の世界に本当の場所がないから、
混乱と暴力と無知と孤立が、どこまでも広がっているから、
私達はこの社会から居場所を失った。
でも、そこに気が付いた人達がやり直そうとしている。
人間を信じ、自分達ですすんで良いものを生み出そうとしている。
世界に調和と平和を、みんなで創ろうとしている。
アトリエのささやかな活動に共感して下さり、
集まって下さる人達が、そのことを証明している。
これが希望の原理だ。
なぜ、ダウン症の人たちの作品に人は感動するのか。
なぜ、その環境に人は集まるのか。
これまで、おこなって来た様々な活動を通じて、
調和の力を人は無視することが出来ないのだと確信した。
そして、共感する人達、一人一人がこの活動を創っているということが。
私達は受け身ではない。誰かの提案を鵜呑みにしている訳ではない。
素晴らしい作品が外にある訳でもない。
みんながこころの内側に同じ美と調和と希望を持っている。
みんなが自ら見出し、動きだし、響き合っている。
東京のアトリエにも、いつの間にか自然にたくさんの人が集まって来た。
みんなが家族のように過ごして来た。
こういった場を広げて行きたい。