5月20日(日)に、日本ダウン症協会東京世田谷支部ふたばの会の総会で、
佐久間が講演をおこないます。
これは一般の方もお越し頂けるのかな?
テーマは「彼らが教えてくれたこと」です。
いつも話したり書いたりしていることよりもうちょっと、
体験の角度から話してみたいなあ、と今は思っていますが、
どんな内容になるのかは当日まで分かりません。
さて、先日、三重県のアトリエに行って来た。
今回はこれからに向けて、もう一度、三重の環境を見ておきたい、
という目的もあった。
これから、いよいよ一番重要な活動を展開していきたいと思う。
一緒に考えたり、創ることに協力してくれる方にも、
今後は参加してもらう様に呼びかけることになるだろう。
ダウンズタウンをどこから始めるかだが、
伝える、仲間、同志を増やす、社会に浸透させていく、
という部分は現在の東京アトリエの活動で良いと思う。
もう一つの安心出来る、安定した「場」が必要だ。
それにはどんな環境がふさわしいのか。
まず、三重にはアトリエとギャラリーが既に整っている。
これからダウン症の人たちの文化発信地として、さらに整備していけばいい。
ここの場所は佐藤家の家を提供している形なので、
今後はもっとパブリックな方法を考えていく。
これから必要なのは、ゲストハウスもそうだが、
まず一番最初は作家たちが暮らせる「家」だ。
この一年は特に、これからの10年、20年を見据えて、
考えて、考えて来た。
何が最善なのか。どうすれば大切なものを守っていけるのか。
このままで良い訳がないと感じ続けている。
私達、気がついた人間、一人一人が行動をおこさなければ、
黙っていては何も変わらない。
国も政治も助けてはくれない。頼りには出来ない。
これからを生きる人達のことを、本気で考えていかなければならない。
私達に何が出来るのだろうか。
制作現場を見て来た人間として、
僕は人間のこころの平和と、異なった存在同士の共生とつながり、
調和というものが最も大切な、育んでいくべき要素だと考える。
そのことの楽しさも、難しさも、たくさん経験して来た。
一生をかけて挑むべきテーマだと思う。
これまでは、その場所が物理的にどんな影響下にあっても、
こころの調和を見つけ、育てていくことが出来ていた。
でも、3•11以後の世界では物理的条件を無視は出来なくなった。
こころという最も大切で、最も繊細なものを扱うということは、
細部にまで注意力が必要になってくる。
どんな環境が良いだろうか。
人が安心出来る。自分を取り戻せる環境。
作家たちの敏感なこころを守るためだけではなく、
こんな時代にどんな人でも望んでいる、ホッとして、
人間性や自然やつながりへの信頼を取り戻せる環境。
僕は「森」のような場所が良いと思う。
前にも書いたが、ただ場所が良くてもダメで、
場には人の思いが宿るのだから、良い場を創ろうという思いを、
たくさん集める。
なぜ、森かというと、森は多様性にあふれているからだ。
目的や一つのことのために、脇目をふらない、
同じ能力の、同じ種類の人間だけで集まる、
そんな種類分けで現代の社会は出来ている。
だから、繋がりを失って、人は病む。争いもおきる。
そんな環境で育てば、人やものを排除して、目的を達成すれば良い、
という人間になっていくのは当然だ。
海にも森にも沢山の生き物がいる。
空や風。土。
沢山の音や色や形がある。全部がそこにあるから良い。
私達の経験出来ないもの、見えないもの、聞こえない音がある、
という事が大切だ。
分からないものが目の前にあるから、謙虚さや畏怖する気持ちが育つ。
このような感覚がつながりを実感させる。
その実感がないと人は孤独感を抱え続ける。
もう一つ大切なのは、サイズ感だ。
私達の社会は大きくや多くということばかり目指して来た。
これは「数」の考えだ。
大きく多くしていくと、気持ちが通い合わなくなる。
気持ちやこころというものは数の対極にある。
これからはむしろ、小さくて、気持ちのこもったものを、
大切にしていく時だと思う。
小さくて充実して、いいなあ、あたたかいなあと感じられるもの。
そんな環境があれば、じゃあもう一つ小さな場を創ろうとなる。
小さな場が沢山できて、浸透していけばいい。
ダウンズタウンの生活部分、第一号もまずは最小単位でと考えている。
良いものが出来て、これがモデルとなっていく。
生活の部分は長い目で見て、安定したものでなければならないので、
現行のグループホームの制度で整えていけたらと考えている。
どこまで可能か、これから実践していきたい。
さて、長くなってしまうので今日はここまでに。
次回は東京アトリエの様に人の集まる場を考える。
沢山のコミニティを見て来たが、人が来なくなってしまった場は、
やっぱり問題を感じるところが多かった。
いる人だけが幸せとか、あるいは隔離されている印象があったりとか、
やっぱり交わることが大切で、
そのためには絶えず、どんな人にとっても居心地の良い場を、
創っていくべきだ。
僕は見た。
新緑の緑に囲まれて、三重のアトリエが遥かな昔と、
遥かな未来が一つになっていつまでもそこにある形を。
自然とこころの奥で、
人々が響き合い、集まって、希望を生み出すであろう情景を。