またまた台風が近づいている。
今度はかなり大きいようで心配だ。
明日から、土日のアトリエがひかえている。
空もどんどん遠くなって行く。
虫の声、鳥の声も遠くなって行く。
秋から冬にかけての乾いて冴えた感覚も好きだ。
季節を意識するようになったのは、
僕の場合はやっぱり制作の場を見て行く中でだった。
作家達の作品も変わって行くし(特に色)、制作に向ける意識も変わる。
僕達スタッフに必要な動きも当然変わって来る。
順応していくということはいつでも大切だ。
自分たちよりもっともっと大きなものが大半を占めていて、
ほとんどはそこで決まって来る。
大きな流れを知って順応して行くためには、謙虚さが最も必要だ。
自分は何も知らないという自覚。
何も持っていない故に、今起きていることを感じようとする。
目の前の事物は動いているし、全く知らない何ものかなのだ、という感覚。
先月、三重で過ごしていたとき、近くにある大王崎まで散歩する日が多かった。
真っ青な海。どこまでも広く、深く。
波の音は途切れることはない。
目の前に無限が佇んでいることを自覚したとき、
その当たり前の奇跡の前でなす術もない。
どこまでも続く海を見ていると、気が遠くなる。
自分がここに立っていることに驚く。
いろんなことがあったけれど、みんなすーっと消えて行く。
考えも感情も残らない。
小さな小さな自分や社会を気にして生きるか、
目の前にある無限に謙虚に耳を傾けるか。
遥かに深く大きなものがある。
それを見るためには自分というものを捨てるしかない。
何も知らない、何も見えていない、という自覚だけが感じる力を高めてくれる。
すべての感覚が開き、無限に包まれ、目にする全てが新鮮に輝く。
気持ち良く生きよう。