今日はまた強い風が吹いている。
ゆるい日差しと白っぽい空。
子供の声。小さい女の子かな。
金槌を打つ音。風の音。
昨日のメンバーはだいちゃん、ゆうすけ君、てる君、ハルコさん、アキさん、
それからあきこさんと稲垣君もいて、そして僕。
みんなでこうして制作を基本にしながらも、何気なくお話ししたり、
一緒に過ごしていられることが嬉しい。
いろんな意味でここは良い場所だ。
日々の出会いや、経験や、みんなと交わした会話、
繰り返し繰り返しやって来る素敵な時。
何度も何度も見た映画、一枚の絵画の前に30分も立っていた記憶。
繰り返しきいた音楽。
美しいものの形。
呼吸して、食べて、すべてが血となり、肉となる。
深く深く、本当に深く眠る。
目がさめると全く新しい何かがある。
過去のすべてはどこかへ消え去ったように。
全く新しい景色。
でも、それはどこかで見たことがあるようなものでもあり、
どこかでその時間を生きていたような気もする。
風が吹いている。
時々静かになって、光がゆれる。
光は波のようにも、粉のようにもなって、どこへでも行く。
キュー、キュキューーーと遠くからの音。
どこかのドアの音なのか。
他には風の音しかしない。
何にもないのにすべてがあって、
そしてここが全部なんだと分かる。
春という季節の生々しさ。
風はどこか遠いところから吹いていて、
そして僕達を遠いところまで連れて行く。
いつかどこかで見た景色。
アトリエで僕達は何をするのか。
もちろん、制作に関わるのだけど、
では、絵を描くことで何をしているのか。
ここでみんなが集まって一つの良い場を創ろうとする。
一人一人のこころの奥へ潜って行く。
未来へ抜け出ようとすることでもあり、遥か過去へ遡ろうとすることでもある。
そして、逃げないでどこまでも本質を見極めようとする。
最後のところまで行こうとする。
最後のものまで見ようとする。
そうやって、ここで何が本当なのか、みんなで知ろうとしている。
毎日そうやって、この場で自分を磨いて行く。
何をしているのか。
ひとことで言うなら、僕達は今をつかもうとしている。
今を知ろうとしている。
今を生きようとしている。
そして、この今にこそすべてがある。
今日は強い風が吹いている。
日差しはとてもとてもやさしい。