2012年12月25日火曜日

クリスマス。
みなさんが良い時を過ごされていることを願っています。

平日のプレクラスも今日と明日まで。
今年ももう終わってしまう。

よし子の移動前なのでお世話になった方達から、ご連絡をいただいている。
よし子宛のメールに返信出来ておりませんが、
近いうちに本人からご連絡させていただきます。

色んな方とお会い出来て本当に嬉しい。
引っ越し準備とゆうたのことがあるので、あまりお時間をとれないのが申し訳ない。

それにしても、僕自身、仕事の上で様々な人達にお世話になっていることは、
いつも実感し感謝の気持ちがあったのだけど、
最近は私的な部分でも自分達を支えてくれている人達がこんなにいるんだな、
とようやく気がついて来ている。
もちろん、僕のことであって、よし子はそんな事はずっと感じているのだけど。

あたたかく思ってくれる人達に、もっと感謝しなきゃ、と感じている。

今年最後の、そしてよし子が東京にいる最後の絵画クラスでは、
土曜日にNHKの吉川さん、日曜日にTBSの和田さんが来て下さった。
お2人とも、何か形にしたいと企画を考えて下さっているが、
お付き合いも長いので取材というより、
この時期に久しぶりに友人に会うような懐かしい気分だ。
仕事に繋がることは大切だけど、それ以上に大事なこともある。
特にこのような場においては、人はこころで繋がらなければ意味がない。

来年からが勝負と思っているので、今年を振り返ることはもういいかなと思う。
でも、3・11以降の一年くらいで、アトリエの使命を、
より明確で力強く果たして行く必要を感じて来た。
よし子の三重移動には実は充分に準備をしてきている。
この時期に出生前診断が波紋をよんだ。
生命の源泉に立ち返って、本当の価値と本当の道を見出さなければならない。

人間が人間らしく、この地球という有限の空間で、
どのように生きるべきなのか、その答えの手がかりを、
この活動の中から示して行けるかどうかだ。

僕個人で言えば、外でお話しするようなことは控えて来たが、
今年は2本ほど、講演をおこなった。
来年も夏にお話しする予定だ。
場からも伝えるが、イベントや企画を通して、そして、
外でお話することで、どんどん伝えて行かなければと思っている。
何故、伝えるのかと言うと、僕が見ている世界に生命の本質があると思うからだ。
僕の見ている世界とは言うまでもなく、ダウン症の人たちの世界だ。

クリスマスと言えば、信州あたりは雪で真っ白だろう。
僕が昔いたところはマイナス18度くらいにはなる。

僕が小さな頃は金沢も雪が積もった。
今よりずっと寒かったと思う。
あれはまだ父と母が一緒に暮らしていた頃だったろうか、
僕はよく母と買い物のあと、祖母の家へ行った。
母と祖母が話している間に僕が寝てしまうと。
祖母は母に「あんたあ、この子、ここにおいてくまっし。あとで連れていくさかいに」
と言って、母を先に帰らせる。
僕はそれを知っていたので寝たふりをして祖母と一緒に居る時間を作っていた。
祖母はその事に気がついていてわざとそうしていたのだろう。
雪を踏みしめて、寒い寒い冬の中、祖母と手をつないで歩いた。
金沢はベタ雪で、雪の水分が多い。
それにいたるところにスプリンクラーから水が流れ続ける。
長靴でもビチョビチョになる。
もらったお菓子の箱に雪が積もって白くなる。何度も何度も雪をはらう。

祖母が亡くなって、お葬式の日は大雪だった。
夜、雷がなった。外は真っ暗で、雪が降り積もり、何度も何度も雷が鳴った。

滋賀県で町外れの工場のある場所で一人暮らししていた頃、
そこでクリスマスをむかえた。
あの冬は寒かった。
僕は短い期間でたくさん働いて今までにないくらいお金を手にしていた。
春が来たらこれを手に勉強しにいこうと思っていた。
古い旅館を改装した寮があってしばらくそこにいたこともあった。
その頃、色川武大の「あやしい来客簿」という小説集に出会った。
工場での休憩時間によく読んでいた。
いい文章だった。夢とも現実ともつかない、
それでいて、生きていることの滑稽さや危うさや、だらしなさや、
そしてやさしさや素晴らしさすら感じさせた。
文体はのらりくらりのようでいて、結局急所はついている。
ヘンリーミラーの南回帰線の文庫本も持ち歩いていた。
そのころはたった1人だったけど、孤独感のかけらもなかった。

祖母はよくいったものだ。
「たっちゃんは(僕は小さい頃、何故かたっちゃんだった)きっかん子やけど、かたいさけ」。金沢の言葉できっかん子は大人の言う通りにしないような子のことだ。
かたいは標準語で言えば良い子とか強い子。
きかん子とかたい子はちょうど真逆で一緒に使われることはない。

滋賀県にいたころ、オウム真理教の事件がニュースで流れた。
おばちゃん達が色んな噂をしていた。
僕は当時、お寺にも通っていて、宗教による事件に様々なことを考えた。
でも、すべてはどこか遠いところでの出来事のようだった。

寒いところにいたころはあんなに嫌いだった雪も、
今は冬になると、雪でも降って真っ白な景色が見たいなあ、
とか呑気なことを考えてしまう。

冬の一人旅も好きだった。
旅行者が少なくて。
まあ、僕が行くような所にはもともとそんなに人はいなかったけれど。

今年の東京に雪は降るだろうか。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。