2015年12月9日水曜日

普遍的なもの

太陽はごちそう。
北陸のどんよりとした気候で生まれ育ったから、
本当にそう思う。冬場でもこうして日が照る時間があって幸せだ。

三重テラスでの展示に向けての作品選定がほぼ終わった。
限られた条件の中だけど楽しんで頂けるものとなるだろう。
額を良いので行ければ本当に良かったと思うが仕方ない。
その分、中身で勝負。
8点の作品はキャプションもいれず、無駄な説明を行わない。
純粋に絵の世界を感じて頂きたいと思う。
一点一点じっくり見て頂ければと。
ダウン症の人たちの豊かな文化に触れて頂きたい。

そして、展示の時期に書くことではないかも知れないが、
僕達は見せるために制作する訳ではない。
むしろ見せること、見られることから遠くにいるからこそ、
純度の高いすぐれた作品が生まれるのだ。

最近、いたずらに人に見せるために作品制作が行われている風潮がある。
様々な場所で本質に全く触れない、イベントや企画が行われている。

僕達は責任を持って意味ある活動、本質に触れる動きを続ける必要がある。

毎度言うことだが、10年後に何が残っているでしょうか?

一番大切なのは場であると、これは何度でも強調したい。
場での充実感の欠如を外での企画によって誤摩化してはいけない。

場に入って響き合うこと。そこで生きていること。
幸せを共有して行くこと。
それが僕達の仕事であると思う。

展覧会や他の企画は社会と繋ぐためであり、
充分に満たされた幸せをギフトすることだ。
それから知ってもらうこと、感じてもらうこと、
一緒に大切にして行きたい何かに気づいてもらうこと、
仲間の輪を広げて行くこと。平和を共有していくこと。

もう20年、場と言うものを通して、人の心を見て来た。
社会の中で、あるいは関係の中で人の心が傷つき、壊れて行く場面。
小さく萎縮してしまう場面。積み重なって身動きが取れなくなっている人。
人が生きるということは、本当に難しいことだ。
自由な囚われのない心を取り戻さなければ、真の平和などありえない。

人の心が自由に動いている本来の姿。
ダウン症の人達の作品はそれを示している。
今の世の中が最も必要としているものだ。

彼らを理想化している訳ではない。
彼らも僕らと同じく、様々な心の歪みを抱えてしまうし、
傷つき蓄積された影響によって身動きが取れなくなる場合もある。
だからこそ、本来の状態に近づいてもらう制作の時間を創っている。

彼らが本来の状態であれる時、そこで示される心の在り方こそが、
僕達も含めた全ての人間の根源にある姿なのだと言える。

多くの人がこの調和の輝きと出会うことを願うばかりだ。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。