2015年6月8日月曜日

描く

土、日曜日、まずはしっかりした良い場になった。

昨日の午前の制作でのこと。
一人の作家がかなり深く集中していた。
柔らかい陽射しで、とても静かな時間。
こころが直に動いている場面。

やさしく時が刻まれて行く。
自然な流れでこのまま最後まで行くのだろうな、と感じていた。
その瞬間、本当に何の違和感もなくふっと筆の振りが変化した。

おやっと思う。
あくまで軽くゆっくりした動きなのだけど、
これまでよりは振りも大きくて、そして勢いがありながら、
全く力が入っていない。

2振りくらいしたところで、僕は外を見た。
風が動いた。葉っぱが揺れる。
風の動きは穏やかで、はっきりと見ることが出来るようだ。

筆の動きと風の動きは、交互に対話するように、お互いをなぞっていく。

時間にすると2、3分。いや、おそらくもっと短いだろう。

始まった時と同じように自然に、風が止み、そして筆の動きも止まった。

制作はまだ続いていたので、彼女は違う呼吸に合わせて変化していた。


書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。