2012年3月17日土曜日

エッセンス

今日は雨ですね。
先週はいくつか打ち合わせがありました。
また、良い企画が実現していきそうです。
少し先になることもあるので、報告は詳細が決定してからとさせていただきます。

ゆうたの意識が結構しっかりしてきたので、一緒に遊ぶ時間も増えたし、
遊び方も変わって来た。

さてさて、今回はここでおこなっていることのエッセンスを書こうと思う。
こうして、毎日、制作の場でダウン症の人たちのこころの動きと向き合っていると、
本当にたくさんのことが見えてくる。
自分の知覚も変容する。
そこから見えて来たこと、感じて来たことを通して、これまで書いて来た。
お話しして来た。今後もそうしていくだろう。

僕はいつでも、そこにある本質に目を向けたいし、
細かい枝葉のことには拘りたくない。
一番大切なことを、みんなと共有したい。
一番大事なものだけ伝えたいし、あげたいと思う。

ただでさえ、人の時間は限られている。
さらに今は大変な時代だ。良い時代でないことは確かだろう。
いつ何がおきるか分からない。
どんな場所で、どんな事になろうと、僕達は生き抜いて行かなければならない。

そんな中で、ああだこうだと議論している場合ではない。
人間にとって本当に大切なものはなんなのか。
幸福に生きていくためにどうして行けばいいのか。
そこをこそ本気で考えなければならない。

何度も書いて来たが、ダウン症の人たちの姿には多くのヒントがあると思っている。

では、ダウン症の人たちの在り方から、私達は何を学ぶべきか。
これは本質であり、精髄であり、エッセンスでもある。
彼らのように感覚を開いて、世界との関係をとり戻そう。

裸になること。素になることだ。
すべてを解放して、私達を囲む世界に触れてみよう。

固くなっている部分、濁っている部分、緊張をすべてとき、
まっさらになって見てみよう、感じてみよう。

アトリエの場は、本当に小さなもので5人も入ればいっぱいだ。
でも、ここには無限がある。
一人一人が内面に素直に向かって行くとき、
裸になって飛び込んで行くとき、必要なものはすべて、
目の前にある。ないものはない。

限界を作って、抑圧しているのは自分自身だ。
こころを見ていくとみんな、自分に催眠をかけているようなもの。

本当は限界もないし、必要なものは目の前にあるし、
恐れることは何もない。

もっと見つめてみよう。もっと耳をすまそう。
もっと深く感じ味わおう。
この世界がすべてを教えてくれるだろう。

作品に向かって行くとき、こんなことを彼らは知っている。
何かを強引に創り出すのではなく、
謙虚に自然に、世界から受け取れば良い。
何をすべきなのか。どのように振舞うべきなのか、その場が教えてくれる。

この瞬間を本当に生きていなければ、こういったことはつかめない。

危機的な状況でこそ、彼らのように素直に感じて、自然に動こう。

自分の中の無駄なものを落として行くと、
どんどん純化され、透明になって行く。
そうすると見えるようになる。感じられるようになる。
本当の意味で生きられるようになる。
何をするべきか、何をしてはいけないのか、分かるようになる。
人を笑顔にしたくなる。
大切な事はそれだけだ。

今からでも彼らのように生きてみよう。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。