2011年10月29日土曜日

仕事について

最近、仕事以外の生活が結構忙しい。
一日が本当にすぐに終わってしまう。
気が付けば、出産予定日まで一週間を切ってしまった。

犬のジルーは日のあたる場所で寝ている。

今年はあんまり無いけど、学生や10代20代の人から、
就職や仕事の相談を受ける事が多い。
こんなアトリエにまで何故?とも思うが、
話を聞いていると楽しく生きている大人を知らないので、
どんな風に生きていいのかイメージがわかないと言う。

今回は仕事について書く。
これだけ、社会が混乱している時だからこそ、仕事について考えたい。
自分の仕事を持ち、日々、良い仕事をする事が本当の社会貢献であり、
人のため環境のために出来る最大の事であると考える。
さらには良く生きるということにも繋がっている。
人は働くべきだ。仕事をすべきだと言う基本から認識しよう。

最初に書いた楽しく生きるということにしても、
楽しさは自分で見付けだし、自分で創りだすものだ。
そのためには経験を深めて行くことが必要だ。

何かやってみて面白くなくても、それは自分の経験が足りないからかも知れない。
もっと深く入ってみると、楽しい世界が見えてくることもある。
今は、仕事にしろ何にしろ、深めて行く、時間をかける、
努力を続けると言うことが、あまり重視されていない。
それでは本当の面白さも難しさも、分かる訳がない。
もっと入れば、もっと経験すれば、深く豊かなものに出会えるはずだ。

何度も書いて来たことだけど、選択肢や情報が多すぎるせいで、
選ぶこと、情報を収集することにだけ慣れてしまって、
知らないことをやってみる、
そこに賭けてみるという勇気がなくなってしまったのではないか。
何をしていいのか分からないと言ってみたり、
反対に自分のしたいことではないからやらないと言ったり。
それでは何も始まらない。
何をすべきか、何がしたいことで、何がしたくないことなのか、
そんな事は始めから決まっている訳ではない。
したくないと思っていることも、
本当にそうなのか経験してみなければ分からない。

とにかく出来ることはやってみる。
そこから始まるのではないかと思う。
僕自身も今の仕事をするまでは、「仕事」という認識はなかった。
ただ一生懸命働いては来たが、それを「仕事」と呼ばないようにして来た。
「仕事」と言ってしまうと、「生活」や「プライベート」と、
分かれてしまう様な気がして嫌だった。
でも、ある時期に「仕事」を意識するようになった。
ようやく気が付いたと言うべきか。
「仕事」とはっきり認識してプロとしてすべき事がある。
では素人とプロとでは何が違うのか。
間違いなく責任だろう。
責任を持って仕事する、この単純なことがとても重要だと思う。

本当にプロが減ったと思う。
一応、仕事としてお金をもらってやっていても、
プロとしての自覚が薄く、素人同然の仕事をしている人は多い。
画材屋の店員は、自分の店のどこに何がおいてあるのかも知らない。
タクシーの運転手さんでも道を知らない人が多い。
自分のしている仕事や、お店の背景や歴史を知らない。
自分がその仕事で何をすべきかなのかも分かっていない。
プロなら最低限、勉強すべきだ。

そして、自分が受容する側に立った時、客になった時、
しっかりした視点を持って、選ばなければならない。
良い仕事をしている人が、認められないのはおかしい。
そつなくこなしているだけの仕事に騙されてはいけない。

僕は客としてどこかに行ったり、受容するときは、
相手に仕事をしやすくする。
だから多分、いい客だと思う。
結構サービスしてもらったりする。
ルールを守って相手が一番したいという自信を持っている仕事をさせる。
そうすると、その人の最大の実力が分かる。
良い仕事を見たらお礼を言う。
たいしたことがなければ、それまでの付き合いだ。
お互いが響きあい、高めあう。
どんなに良い仕事も、受容する人あって成り立つ。
言い換えれば、理解者あっての仕事だ。

本当の理解者を得るには妥協してはならない。
例えば、いいものを作って売るとして、当然、大量生産したものより高くなる。
必ず、高いと言う人が出る。
そこで安くして質が落ちるケースは多い。
これはものに限らず、あらゆる仕事の質に関わる話だ。
簡単に理解されやすい、みんなが分かり易いだけの仕事をしてしまっては、
本物の理解者は得られない。
やっぱりここは、本当に良いものをつくる。
質の高い仕事をする。多少高くとも、
多少、受容する側に努力や理解が必要であっても、
それ以上の価値あるものをつくる。それでも納得していただける仕事をする。

店も客も出しただけの、出した以上のものが帰ってくる。
それが仕事だと思う。
だからお互いが支えあって、良い仕事や生活がある。

何をやっても仕方ない様な社会ではある。
でも、だからこそ最大限いい仕事をしたいし、良く生きたいと思う。

誰だって、始めからは何も出来ない。
ただ、精一杯、出来ることをする。
求められたら、少しでも答えようとする。
良い仕事が出来るようになるまでには、時間が掛かる。

仕事は選ぶものではない。選べるものではない。

本当の仕事は、自分が仕事を選ぶのではない。
まわりがこの人にこの仕事をしていて欲しい、と思ってくれる。
ある意味でまわりが決める。
仕事自身が人を選ぶ。

だから出来ることは、選んでもらえるだけの資質を磨くことだ。
努力を惜しまず、進み続ける。
いつか、自分のすべきことは明晰になる。迷いはなくなる。

どんなことでも何か人の役に立つ、
何かのためになるために、僕達は生まれて来たのではないか。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。