2011年10月17日月曜日

最近の事

先日、金沢医科大学の保健師の方がアトリエへお越し下さった。
ダウン症の人達や保護者の方達に、少しでも役立とうと垣根を越えて、
ご活動されている方だ。
「ダウン症児の赤ちゃん体操」やダウン症の人たちと地域の様々な情報を提供する、
「ダウン症のこと聞くまっしシステム」等の活動に関わっておられる。
すでにキャリアもおありの方だが、謙虚に様々な活動を見て回り、
ダウン症の人たちと、その家族の環境を少しでも良くしようとされている。

私達もこういった方々に、作品から見えてくる、彼らの感性や可能性を伝え、
お互いに意見交換出来ることは、本当に嬉しいことだ。

最近は、彼らに対する無理解や、
悪い環境で傷つけられている現状を聞かされる事も多かった。
でも、一方で私達にはおよびもつかない様な努力を重ねている方達もいる。
様々な場で、本気で彼らに向き合い、良い環境と社会への理解へ、
一生懸命取り組んでおられる方々もいる。
そういった方々には頭が下がる。

微力ながら、制作の場から新しい価値や可能性を発信して行きたい。

彼らを取り巻く環境は、少しづつではあるが確実に良くなって来ている。

アトリエからは次の可能性として、
ちょっと彼らを「カッコいい」と思える様な事を提案してみたい。
今度のグッツ展開が実現すれば、その様な可能性に繋がるかも知れない。

日曜日は、けいこちゃんとてる君が、凄い勢いで描き続けたが、
出来上がった全部の作品が、かなりレベルの高いものだ。
いったいどうやったら、あんなに途切れる事なく、
創造性があふれ続けられるのだろう。
いつ見ても驚かされるし、魔法みたいだ。

土曜日は蒸暑かったが、ハルコが太陽の絵を描いていて、
「ここに太陽あるから暑くなっちゃったよー」と言った。
あまりに自然に自分の描いた太陽の絵で、みんなが暑くなったと言う。
そうだよなあと思う。なんて正しい世界に生きている人達なんだと。
常識で考えたら、絵に描いた太陽で暑くなる事はないだろう。
だけど、客観的現実だけが真実だろうか。
大事なのは一つ一つの出来事に、どれだけこころが動くか、
感性が働くかだ。
自分の描いた太陽が暑かったというのも、
現実の一つのかたちとして可笑しくはない。
その時、内面にも外面にも感受性が強く動く。
それが私達の現実だといえる。
太陽は外にだけある、暑くなると思っていても、
それだけでこころが全く動かなければ、その現実を生きた事にはならない。
私達は、
「間違ってはいないけど感受性が止まっている世界」に生きていないだろうか。

このブログでも時々、彼らの面白い発言や行動を紹介する事がある。
それらをただ面白いから、書いている訳ではない。
そこに何か真実がある様な気がするのだ。

例えば、以前取材の方が来た時、てる君が急にトイレに入って出てこなくなった。
取材の方はその日は、教室には入らない予定だったが、
急に見たいと言い出したのだった。
その方達が帰ると、トイレから出て来たてる君が、
「フトン屋さん帰ったの?」と穏やかに言った。
当然、その方はマスコミの方でフトン屋さんではない。
でも、フトン屋さんを、良くない言い方かも知れないが、
何かを押し売りする人と解釈すると、てる君の言葉は正しくもある。
むしろ「あの人、強引だね」というより、もっと真実に迫っていると言える。

そろそろ関東でも放射能で高い数値が出だしているが、
本当に危機感が薄い気がする。
本気で子供達や若い人達の未来を考えて行かなければならない。

誰しもが思うことだろうが、
なんの罪もない人達が病に冒されて行く危険性がある。
絶対に許されないのは当然だが、命を守ると言うことを考えなければならない。
勿論、答えはみんな違うだろうし、ある意味で答えなどないのだろう。
ただ、起きている事から目を背けてはならない。
なかった事には出来ないいじょう、危機的状況に向き合わなければならない。
その上で、どう判断するか。
私達は真剣に考えて、決断しなければならない。
生命を弄んではならない。
大切な存在を私達は守って行けるのだろうか。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。