2015年9月10日木曜日

水に包まれた時間

台風の影響で猛烈な雨が続いた。
圧倒的な水の世界だった。
平日のクラスと重なった日もあったが無事に。

ラジオに少しだけ出演します。
9月13日(日)朝7時05分〜7時15分頃 J-WAVE 「WONDERVISION」
生放送です。お時間のある方、宜しければお聴き下さい。

怒濤のごとく降り続ける雨の中で、時に水が止まって見えたり、
霞んで遠くへぼやけて行ったり、強い浄化を感じたり、
今もう、その雨が存在していないことが不思議だ。
こんな風にある全てが本当に夢幻のようなものなのだろう。
洗い流してくれる、という感じもあった。

いくつもの時間が交差する。
時に凄まじいスピードで駆け抜け、時に永遠のように静止して。
速い流れと、止まっているかのような場面が、同じ場で交わっている。

色んなことを思い出す。思い出すと言うよりは、その場面が動き出す。

場と言うものに人生の全てを賭けて来た。
今の場がどんなものであれ、それこそが与えられた回答だと思っている。
そして物理的には場に立つ時間はどんどん減っている。

役割を与えられて、そこに居られたこと、今こうしてここで見ていること。

これまで出会って来た人達のやさしさ。

想いをのせて、想いをなぞって来た。

どこまで来たのだろう。何処まで行けるのだろう。

場は何処から来てくれたのだろう。
僕にとっての場はいつ終わってしまうのだろう。

これまでも、これからも場の意志に従うしかない。
場が決めること。ずっとそうやって来た。

良いものも悪いものも、やって来る何ものも受け止めて、しっかり見て来た。
そんな全てが見せてくれているものの大切さ。
誰かから来たもの、どこかから来たもの。
ほんの一瞬しかこの場に留まってはくれないのだから。

自分なんて居ないし、自分のものなんてどこにもない。
それが場から見た答えだと言える。

だから与えられた全てを抱きしめる。

僕の心や身体を使って生きてくれている人達。
もう会えないと思っていたのに、こうなってからの方がより生きている人達。
最近は増々、みんなが居るのを実感する。

無数の時間と場所を同時に生きていることを実感する。
何もしないでも、何かがやって来て、何かをしてくれる。
ただ任せていれば良い。そして今しかない一瞬を全身で味わう。

誰かに見せてあげたかった景色があるなら、
今自分が見に行くこと。
そうすれば、みんなに見せてあげられる。
いや、それはみんなで一緒に見ているということだ。

降り注ぐ雨。溢れる水。流れる時間。
身体はまだ雨の音を聴いている。
あの場面だってある日、突然戻って来るだろう。

無数の場面が交差する情景を見つめながら、
また現場へと向かう。もう一度、更に深くなぞるため。
掛け替えのない時間と人と出来事に愛を伝えるために。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。