ずっと月を見ていた。
明日から夏の制作。連続でアトリエが開かれる。
どんな時間になるだろう。
いつだってそこに行けば、最高の時間がある。
場は決して裏切らない。そんな仕事をしたい。
ずっと憧れて来た場所がそこにある。
映画を見に行く。寄席へ行く。
祭りに行く。
そこにはいつでも夢があって、何か違うものが見られた。
見ている時間だけが全てを忘れて夢中になれた。
良い店や、旅館やホテル。
うっとりさせてくれる多くのもの。
人ってこんなに凄いんだ、こんなに素晴らしいんだ、と感じさせてくれる瞬間。
二進も三進も行かなくなって、どうすることも出来ない人達。
どこかで大逆転が起こらなければ嘘だと感じていた。
教えてくれた人達の傍へ行きたい。
楽屋裏でありスクリーンの向う側。
そこでは日々、汗と涙が流される。
場を見つけた時、僕はこれで行こうと思った。
たまたま、むいていた。センスもあった。必要な才能もあった。
その上で誰よりも努力を重ねた。
沢山勉強して、沢山練習して来た。
こころの深い部分での安心を持ってもらいたい。
満足して帰って欲しい。今までの自分よりもっと自分らしくあれるように、
その時間の中でリズムを見つけて欲しい。
そのためなら自分の命を削ってもいい。
どんな時でも美味しいものを作って、お腹いっぱいにして帰してあげられるように。
仕込みをした。準備をした。
喜んでもらえることを幸せに思う。
だから自分を裏切ることが一番出来ないことだ。
精一杯の、掛け替えのない場が目の前にある。