2014年5月8日木曜日

触れ得ない領域

別に曖昧模糊としたものが良いと言う訳ではないが、
近頃は簡単なプラスチックみたいな考えが広がっている気がする。

神秘とか言葉で言うのは容易いけど、
本当に計り知れない領域を感じたり予感したり出来ている人がどの位いるか。

戦慄とか、畏敬の念。それから恐れ。

ここから先は違うものがある、という感覚や、
触れてはならないという意識。
自分は全く知らないし、通用しない何かが確かに存在しているという実感。

世界にも人の心の中にもそのような領域が存在していて、
下手に解釈したり言葉にしたり整理することで、
分かった気になってはならないと思う。

制作の場に入るということは、
絶えずそういった感覚を研ぎ澄ませて、
真っ暗闇を(あくまで比喩だけど)何処までも突き進むことだ。

こころとか精神とか、あるいは愛であるとか、命や宇宙や、
そういうことを色々言ってみたりもするが、
僕の言っている場という観点から言わせてもらえば、
ではやってみせて下さい、見せて下さい、ということだ。
場においては、行けるのか行けないのか、出来るのか出来ないのか、
それがすべて。言い訳は不可能。
黙ってその場に立ってみれば、何処まで行っているのかなんて、
一目瞭然、みんなに分かってしまう。感じてしまうものだ。

だから良いのだと思う。ここには嘘がなくて。


書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。