2014年5月3日土曜日

音楽を聴く

最近、良い音楽に触れられる機会が多い。

音楽を聴いている時間が一番好きかも知れない。

ほとんどの人は世界はもう出来上がっていて、
自分はこうで、他人はこうで、外はこうなっている、と思っている。
でも、それは実はその瞬間、瞬間に創っている世界だ。
創られてしまうのがあまりに早いので、もう出来ていると感じてしまうだけ。

僕達は制作の場に入れば、ゼロから始めなければならない。
知識や経験は何の役にも立たない。
何かに頼れば、方向が固定して動きが止まる。
止まれば当然、出来上がった世界から一歩も出られない。

深いところまで入って行くためには、
出来上がったものを見るのではなく、今、この瞬間に生まれようとしている、
その運動を見なければならない。

音楽もそういうことを表している。
音楽はその場で生まれて、消えて行くから素晴らしい。

音楽ばかりでなく、絵画も他の芸術も、
固定された世界の背後にある、動きのようなものを捉えている。
この宇宙が生まれるプロセスも芸術表現のような動きと言える。

音楽を聴く体験は、こころや世界の深さに分け入って行く時の感覚とにている。

場は絶えず動き、何かが生まれつつある瞬間の連続。
敏感に反応して行かなければ、大切なものを逃す。

大事なのは俊敏な感覚を生み出す流れへの直感だ。

時に音楽はそれを与えてくれる。
今しも溢れ出て来る運動に、どう対応して行くのか。

すぐれた音楽を聴いているとき、やっぱり制作の場を思う。
こんな感覚で、こんな風に動いてみたいとか、
身体や意識の使い方、こうやって動かして行く、とか、
そういうインスピレーションが大切だ。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。