最近、良い音楽に触れられる機会が多い。
音楽を聴いている時間が一番好きかも知れない。
ほとんどの人は世界はもう出来上がっていて、
自分はこうで、他人はこうで、外はこうなっている、と思っている。
でも、それは実はその瞬間、瞬間に創っている世界だ。
創られてしまうのがあまりに早いので、もう出来ていると感じてしまうだけ。
僕達は制作の場に入れば、ゼロから始めなければならない。
知識や経験は何の役にも立たない。
何かに頼れば、方向が固定して動きが止まる。
止まれば当然、出来上がった世界から一歩も出られない。
深いところまで入って行くためには、
出来上がったものを見るのではなく、今、この瞬間に生まれようとしている、
その運動を見なければならない。
音楽もそういうことを表している。
音楽はその場で生まれて、消えて行くから素晴らしい。
音楽ばかりでなく、絵画も他の芸術も、
固定された世界の背後にある、動きのようなものを捉えている。
この宇宙が生まれるプロセスも芸術表現のような動きと言える。
音楽を聴く体験は、こころや世界の深さに分け入って行く時の感覚とにている。
場は絶えず動き、何かが生まれつつある瞬間の連続。
敏感に反応して行かなければ、大切なものを逃す。
大事なのは俊敏な感覚を生み出す流れへの直感だ。
時に音楽はそれを与えてくれる。
今しも溢れ出て来る運動に、どう対応して行くのか。
すぐれた音楽を聴いているとき、やっぱり制作の場を思う。
こんな感覚で、こんな風に動いてみたいとか、
身体や意識の使い方、こうやって動かして行く、とか、
そういうインスピレーションが大切だ。