2014年3月3日月曜日

僕達の役割

肌寒さは続きますが、春も近づいて来ましたね。

これからののことがあるので、準備がいっぱいです。
頭がついて行っていないのか、仕事上のミスも増えました。
ご迷惑おかけした方々に申し訳ないです。

これまで制作の場にかなりの割合で集中させてもらって、
ありがたい日々だったと思います。
とてもやりがいのある仕事です。
そして自分が最も力を発揮出来たジャンルでもありました。
今後も場に立ち続けるでしょうが、割合は減って行くことになります。
自分自身のライフスタイル面でも不安もあります。
でも、今はなによりもきっちりと引き継ぎを成功させたいと思っています。

大切なことは伝えて来たと思います。

どんな仕事も簡単な仕事は無いでしょう。
制作の場に立ち作家たちが自然に創造性を発揮するための場を創る、
その環境に責任を持ち、作家たちと関わり続けるという僕達の役割も、
様々な難しさがあります。

僕達は作家に対してはオリジナリティや自発性を最も大切に考えます。
指導的な手を加えないだけではなく、どこにその人の本来の個性があるのか、
素早く感じとりながら、余分な要素、
邪魔をしている影響を取り外すことが出来なければなりません。
作家一人一人の持ち味が、
一枚の絵の中ですべて発揮されていなければならないのです。
自由になってもらうためには何でもします。

それが全てではないのですが、場の雰囲気もとても重要です。
勢いがあり過ぎてもいけない。弱過ぎてもいけない。
もっと言えば丁度良過ぎてもいけない。
どんな時もバランスを見極めて行く。

僕達はいつでも、必要な場所に的確に点を打って行かなければならない。
それは狂いがあってはならないことです。正確でなければならない。
ちょっとしたズレが大きなことに繋がるからです。

強い強い注意力と、それを保ち続ける体力が必要です。

作家が良い状態に入ってくれた時(ここまで行くのが難しい)、
良い流れに乗って、そのまま行けば決まるという最後のところ、
この数分か長くて10分位の時間が実は大切です。
そこへ行くまでに必要とされたような細やかな技術はもう捨ててしまった方が良い。
あるところまで行ったら、俯瞰も、冷静さも、捨てる。
ちょっとは危険を冒してでも、自分も作品に溺れてみる。
自分のすべてを投げ捨てて、作家と一緒になってその流れに入って行きます。
思い、覚悟、気合い、愛情、尊敬心といったものは確実に伝わり、
場や流れに密度を生み出します。強い共感も一体感も生まれます。
その時はもうこれが最後でも良いと思うくらいの気持ちで行きます。
また大袈裟かもしれませんが、命をかけます。
この時は小手先の技術や思考はもう必要ないです。
ただ、人と人の芯だけが残ります。
創造性の動きだけがひたすら密度を高めて行きます。
作家が10のレベルで行くとしたなら、
確実に12か13位まで上がっていくものです。
これは間違いありません。
そこを経験した後には作家との信頼関係も深まって行くのです。

僕達は生命の芯に関わる大切な大切な仕事をさせてもらっている。
そのことへの感謝と責任を忘れてはいけないと思っています。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。